記者職
東京支社編集局報道センター
松下 文音
首相の動静を追う「総理番」をしています。日中は首相官邸で、分刻みで訪れる首相の面会者に要件を取材。朝晩は首相周辺を回り、首相が今どんな事柄に対し、どんな思いや考えを持っているのか探ります。首相が短時間、取材に応じる「ぶら下がり」の際には首相に直接、質問できます。日本の最高権力者に疑問をぶつけられる貴重な機会です。
7月の着任直後に安倍晋三元首相の銃撃事件が起き、初めてのぶら下がりで、目を赤くする岸田文雄首相を目の当たりにしました。内閣改造、国葬、閣僚の辞任…。国の動きを間近で追う日々は緊張に満ちています。
官邸で見える動きは表面的ですが、国の方向性が決まる大きな流れの一端でもあるはず。その流れをしっかり見定めていきたいと考えています。写真は首相がコロナにかかり、リモート取材に応じた時のぶら下がりがテレビ中継された時の様子。質問しているのが私です。
2018年9月の胆振東部地震です。発生数時間後、震源地の胆振管内厚真町へ入りました。被害が特に大きいとみられた山間の地区を目指し、同僚と2人で土砂崩れの上を何カ所も歩いて越えました。地区では土砂に押しつぶされた家屋の下に、まだ複数の住民が残されたまま。自衛隊員らが手作業で救助しようとする様子を、住民の家族が見守っていました。いくらか言葉を交わしましたが「取材」のための言葉は掛けられませんでした。通信は遮断され、電話で状況を吹き込むこともできず、無力でした。記者としてあの時、何をすべきだったのか、考え続けています。
どの取材に対しても好奇心を持って臨むこと。自分自身が「面白い」「問題ではないか」「伝えたい」と実感して記事を書かなければ、読者の心は動かせないと思います。取材相手や事柄に関心を持ち、率直に質問を重ねることが、その一歩だと考えています。また東京に来てからは「北海道」という軸足をより意識しています。政治の取材対象は幅広いですが「道民にどんな影響がありそうか」「道民からどんな声が出ている(いた)か」という視点から、問題点がないかを考えるようにしています。
地域に根付いて働く経験を通じ、読み手の顔や現場を具体的に意識しながら取材、執筆できることです。
富良野支局では記者3人で毎日1ページを作りました。地域で暮らし、街の人と日々話し、時に厳しい指摘も頂く。記事が読者に届いている実感と責任、私たちも読み手に支えられていることを学びました。その経験は全国紙やキー局の記者と働く今も、強みです。「道民のため」という軸があることで視点を定められる。気持ちの上でも、首相らに厳しい質問をする時は緊張しますが〝現場〟を思い浮かべると「しっかり聞かなければ」と奮い立ちます。
ブロック紙として地域に密着しつつ、中央も取材する。その経験をまた地域に還元していく。道新記者ならではの醍醐味ではないでしょうか。
※記載の所属・担当業務内容は執筆時点(2022年11月)のものです。
2011年10月入社
本社報道本部(当時)。遊軍、警察担当。
2012年7月
苫小牧支社報道部。警察担当。
2013年11月
富良野支局。地域に関わる話題全般。
2016年8月
本社報道センター。司法、警察、遊軍を担当。
2022年7月
現職場
街を歩き、大小さまざまな美術館や博物館、図書館、公園巡りをしています。また大学時代にピアノ演奏を専攻し、ミュージカルサークルに所属していた縁で、今でも音楽や舞台が好きです。富良野支局時代は市民劇団に入り、年2回、「富良野演劇工場」で公演していました。仕事柄、連絡を気にしながらにはなりますが、気分転換が仕事の活力です。